21. Writer 遠夜
───数時間後。 「んでね、その時テウムがシャラにね、」 ずっと話し続けていたはずなのに、話し始めたときよりもエスカレートした口調で、シャラはテウムについて語り続けていた。 「う・・・・」 そろそろ限界に近くなってきたオムレットは、涙ながらにシリオンに視線を向けた。 そこには、悠々と木の下に座り込んで、分厚い本を淡々とした慣れた手付きで捲っている姿が認められた。 「あ・・・あんたはまた本なんか読んでるし・・・・・っ」 その言葉には無反応に、シリオンはページを捲り続ける。 いつの間に移動したのか、その傍に丸まり、キツネが居心地良さそうに眠っていた。 「あああああ・・・っっもぉ分かったよっ!シャラ、テウムがどんなけ良い人かとか、すんごいじゅーぶんなんでっ!!」 「テウム・・・会いたいな・・・・」 「う・・・・」 一気に辺りの空気が重くなり、オムレットは、シャラの言葉に詰まる。 呟いたきり黙り込んだシャラと、それを受けて胸中で掛ける言葉を探しているオムレットと、ひたすら淡々と単調に何事もなかったかのように通常通り本のページを捲り続けているシリオンと。 「────良いよ、会おうよ。会いに行こうっ!」 「・・・・・」 「さっきも言ったけど、保証は出来ない。でも、絶対会わせるから。会えるまで、探し続ければ良いんだよ!待って、じっとして。いつ来るのか分からないまま、不安になってるより、ずっと良いと思う」 「・・・・・・会える・・かな?」 不安げに、何かに縋るように、シャラはオムレットを見上げる。 そんな少女に、オムレットは微笑みかけて、 「あたしはさ、そういう時動かないでいると不安になるんだよね。むしろ身体を動かして、何かを、何でも良いから行動していた方が安心するよ。君も、シャラもそうだとは断言出来ないけど、少しはそう思えるんじゃないかな?あたしも、多分シリオンも、手伝うから。シャラが諦めない限り、手伝い続けるよ。絶対。あたしも諦めたりしないからさ」 「絶対?」 「大丈夫だよ。絶対。ね、行こうっ!」 「・・どこ行く気さ」 シャラに声を掛けて、何処かへと進み出したオムレットに、シリオンが声を掛けた。 立ち上がったその手には、先程まで読んでいたであろう本が閉じられて、抱えられている。 よく見ると、その肩にキツネが乗っていた。 「・・・・むぅ」 「やっぱり」 突っ込まれて、言葉に詰まったオムレットに、シリオンは呆れたように彼女を見た。 気が付くと、キツネはシリオンからシャラの肩に移動していて、どこか落ち着いたように丸まっている。 「・・・・まず、幻の森には居ない。そうすると、他の大陸だな。第三大陸以外は、『上』の許可がいる。だから───」 「んじゃ、目指すは第三大陸っ!!!」 時間はあるさ 私たちにはまだまだ時間がある そう 持て余すほどの、長い時間が・・・・ Go To Next? Or stopping on the way? "Next" is clicked to the following chapter! |