3.


Writer 遠夜



「そうだろうけど―――」
「んじゃ決定!帰ろ〜♪ゴッハン!」
「・・・・・・」

 上機嫌に行って、足取りも軽いオムレットを、シリオンはあきれたような、何とも言えない表情を向ける。

「おごりな」
「うん!・・・って、えええっ?!」

 行った言葉に条件反射のように答えたオムレットは、前言撤回すべく、口を開く。
 が、その前に、シリオンが既に用意しておいた『本』の文章をなでていた。

「ちょっとぉぉぉぉぉー?!」
「転移」

 むなしく響いた悲鳴は、シリオンの冷たい一言と、先ほどの色とは違う緑色に輝く光に包まれて、2人を跡形も無く消し去った。

「・・・・・誰か居るの・・?」

 その一瞬の発光の直後、いぶかしげな声音の後に続く悲鳴は、2人に届くことは無かった。





 ――――学術院

 光が収まると、見えた場所はその名のとおり、学術院の目の前だった。
 シリオンの職場ともいうべきか、ともかく、依頼はほとんどここから、もしくはここを通して行われていた。
 迷うことなく、シリオンは中に入っていく。

「って、ちょっとまてぃっ!」

 あることに気づいて、オムレットはシリオンに制止を掛ける。

「飯は後。報告して、ちゃんと許可とってからじゃないと、怪しまれるでしょう」
「えーーー・・・っじゃなくって!」
「何」

 流されそうになりながら、(まぁ実際食べたいとは思っていたが)当初声を掛けた理由を思い出す。

「だからさっ、ここ、あたしが入っても、良いの・・・?」
「・・・あーーー・・良いんじゃない?ワリト」
「わ・・・わりとって・・・・・」

 かまうことなく、シリオンは何事も無かったかのように建物の中へと入っていく。
 その建物は、かなりの昔からあったのだろう。
 年季が入っていて、それでもなお、というよりむしろそれがなおいっそうそれを引き立ててでもいるのだろうか、何か圧倒的なモノがあった。

 学術院と一言で言っても、それはとても広い。(意味的にも、敷地的にも)
 恐らく、この建物は、中央館の一つ手前にある、色々と事務的なことをするところであろう。
 正門は、2人から見て、はるか後方に見えた。
 この学術院のシンボル的な存在の塔は、周りを囲うように6つ、中央に1つある。
 一応、何故そういう配置にそれがあるのかという意味もあることはある。
 簡単に言えば、いわゆる魔方陣だ。
 六紡星とは、魔力を高める効果があるらしく、それが大きければ大きいほどより効果は高い。
 塔は、それを描くような配置にしてあるので、この学術院内では、魔術の行使が通常よりもやりやすい・・・らしい。
 後、まだまだ色々と建物も素歌あるのだが、全ては説明不可能。
 なんといっても、ここの構造を知っているのは、院長と、後はほんの一握りの物好きのみ。

「・・・平気なのかなぁ・・・」

 色々と思いついた学術院の知識はさておき、心配顔で、ともすれば見失いそうになるシリオンに追いつくべく、オムレットは走り出した。


 







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