6. Writer 遠夜
「えーっと、これがこーなって・・・・」 言いつつ、オムレットは板の側面についているスイッチをスライドさせる。 すると、パシュ、という空気の抜けたような、弾けたような間の抜けた音とともに、板に垂直になるように、半透明の画面が現れた。 大きさは板をそのままたてにしたような感じで、右下の方に白い模様が描かれたが、それが文字だとわかった瞬間消えてしまい、読み取れなかった。 今見えなくとも、使っている本人は理解しているので、別に問題は少しもないのだが。 「それ何?」 「んーと、いわゆる便利な道具v」 ケイス・ケイに聞かれて嬉々として応えるオムレットに、ぼそっとシリオンの言葉が飛ぶ。 「・・どうせ遺産だろうが」 「違うわっ!これは完全自作っ!!」 「・・・・・・・・」 その言葉に瞬時にむきになって叫び返され、シリオンは無言でため息をついた。 ピッ、と音がして、半透明の画面いっぱいに何語か良く分からない文字が流れ出す。 数秒で全て消え、黒い板面に凹凸が現れる。 それを確認することもなく、オムレットはその凹凸に指を走らせた。 画面に文字が現れては消える。 数個のウィンドウが立体的に現れ、それらを分析して、目的を見つけ出す。 最終的には、様々な記号とともに地図が現れた。 「よっし。出た〜っ!」 得意げに、オムレットはをれを持ち上げて、2人に見せる。 「あ。地図なんだ?」 「・・・それなら、最初からある地図を見ればいいんじゃないか?」 「・・これは、地図は地図でも、もっと性能がいいやつなんだよっ!!」 怒鳴りながらもその地図をいじり、もうすこし拡大した状態を表示させる。 瞬間、ビーっという耳障りな音が地図から発せられる。 「な・・・なに?!」 「あれ・・?」 画面が赤く光っている。 それどころか、突然、波打つようなグラフィックが現れる。 それを見たオムレットは、首をかしげる。 「どうした?」 「これって・・・もしかしてケイス・ケイの探し物?」 「・・って、オーヴェリアン?」 「そこそこでかいエネルギー体が、この屋敷の裏辺りから感知されたみたい。それで警告が出てるんだけど・・」 ただそれだけにしては、おかしい。 この程度のエネルギー体なら、警告はありえない。 せいぜい、警戒辺りだ。 不安定な何かがそこに共存しているのか、もしくはコレが壊れたのか。 「オーヴェリアン・・・あるとするなら、そこなんだろうね」 「そだね。ほかは特になさそう」 「なら、もう行くか?ここにいても仕方あるまい」 シリオンの言葉に促されて、ケイス・ケイは頷いてドアの外に出る。 オムレットはもう一度地図を確認して、最初にいじったスイッチを元に戻して、地図をただの黒いケースに戻して歩き出す。 (そーいや、シャラまだ寝てるのかな?) オムレットは、ふと思い出した人物の様子を見に行こうかな、と、一人ごちた。 「・・・・・・・」 シャラは、無言で瞳を開き、何でもなしに周りを見回した。 しばらくそのままボーっとして、いまだに眠り続けているパクウの頭をなでてやる。 それから少したって、だんだんと意識がハッキリしてきた。 ひざの上にまるまっていたパクウが起きたのか、顔を上向けtえ、シャラと視線をあわせる。 「おはよう。パクウ」 おはようも何もないくらい高く日は昇っていたが、とりあえずそういって立ち上がった。 その動作に、寝起きとは思えないくらいすばやくシャラの肩に飛びつくパクウ。 「3人とも、もう仕事終わったかな?」 そう一人ごちて、「3人を探しに行こうか」と、パクウに話し掛けつつ、屋敷に向かって歩き出す。 が、ふと下を向いた瞬間、不自然に黒い影がシャラを包んでいた。 「・・・・?」 疑問に思って後ろを振り向いて、ソレを見つめてとりあえず固まった。 ソレは、あえて言葉で表現するなら、クマとイヌとクジャクを均等に足して3で割った感じで。 ・・・普通の一般人なら、とりあえず混乱でもしつつ大音量で悲鳴をあげて、即座に回れ右して逃げ出すこと必死であろう。 だが、何事にも例外はつきもので。 事実、シャラは十数秒間沈黙したままソレを見つめ、 「かわいいーっ!!」 と、大声で叫びつつ、ソレに抱きついてくれた。 「ねー」 その頃の3人は、地下からの階段を上っていた。 「今さ、何か声聞こえなかった?」 「声・・・?」 いまいちオムレットの行ったことが分からず、シリオンは聞き返す。 「うん。多分、人の声だと思うんだけどさー・・・」 「シャラじゃないかな。今ここらにいる人間って、僕ら以外にはシャラくらいしかいないし」 「そだね。ってことはシャラ起きたのかな?」 ケイス・ケイの言葉に、オムレットはのんきにそう呟いた。 「・・・いくらあんたの耳が良かったとしても、普通こんな地下まで外の声が届くか?」 「・・・・うーん、そうかもしんないけど。じゃあ何でさ?」 シリオンにそういわれて、少し不安になったらしく、オムレットは聞き返した。 「・・・何か、あったとか」 「・・・・・・・・・・・・・・・。って、そう思うんだったら、早く行こうってっ!!」 「あ。オムっ?!」 言って、階段を駆け上るオムレットには、ケイス・ケイの言葉が聞こえなかったのか、すぐに姿が見えなくなる。 仕方なしに、その後を追うようにケイス・ケイは走り出す。 それを見て、シリオンは2人が言ったからいいと思ったのか、ただ単に面倒なのかは定かではないが、ゆっくりと階段を上っていった。 |