4.


Writer 遠夜



 翌朝。

 朝食ついでに食堂で待ち合わせた4人は、食後直行で例の屋敷に向かった。
 朝だというのに屋敷の中は薄暗く、板で打ち付けられた窓の隙間から入る光のみを頼りに、3人は散策していた。
 3人。というと、あと一人はどうしたんだという疑問が残るところだが、残りの一名――シャラ――は、よっぽど気に入っていたのか、3人が気付いたときには大木の下で寝いっていたのだった。
 そうして、あまりにも気持ちよさそうに寝ていたので起こすのも忍びなくなってしまい、パクウにシャラを頼んでおいて(それでいいのか)先に3人で屋敷内の散策をはじめていたのだった。

「あー・・なんか出てきそうでヤだなぁ・・・」
「そーだね・・なんかもう色々と」
「大別して3種類って感じ?」
「そうそう。僕は黒いのさえ出てこなければいいけど・・」
「アレはねー。わいてうようよ出てこられると対処のしようが・・・」

 オムレットとケイス・ケイの2人は想像して、その自らの想像に怖気が走ったのか沈黙した。

「それにしても・・丈夫な造りだな」
「・・・何が?」
「この屋敷がだ」

 今まで黙っていたシリオンが、唐突に言葉を漏らしたのに想像が絶たれてオムレットが聞き返すと、歴史学者は3人が歩いている廊下を見回しつつ言った。

「そういえば。この屋敷築50年だっけ?」
「72年。・・当時の建築技術を鑑みて、かなりの金が掛かっているな。これだけの植物に侵食されながらも、少し掃除なり改装なりでもすれば人が住めそうだ」
「ってか、そうじゃないとあたし達が困るじゃん」
「お前なあ・・・・」

 みもふたも無い発言をしたオムレットに、呆れた口調で歴史学者は言葉を失う。

「後どこ見てないんだっけ・・・?」
「えーと・・。あとは、地下と1階の2・3部屋くらいー」

 ケイス・ケイの疑問に、手に持った地図を外から漏れる光に照らして見て、オムレットが答えた。

「大分まわったな・・・全部で何部屋あったんだ?」
「30くらい?」
「うわー・・良くまわったよね、僕たち・・・」
「そーいやちょっとお腹減ったなー・・」
「朝食あれだけ食べておいて良く言うよ」
「い・・いつものことじゃんかっ!」

 今朝の、一つのテーブルに収まりきらなくて、もう一つテーブルを持ってきていたショコラの姿を3人は思い出していた。

「まあまあ。それじゃぁ、とりあえず下に下りよう?ここにいても仕方ないし」
「・・・そうだな。とりあえず、1階まで降りようか」
「そんじゃさ、いっそのこと先に地下行こー。何か怪しげだし」
「怪しげ・・・」
「やっぱダンジョンの王道ってったら、地下に魔王が居たりするもんだし。上手くいったらそのまま全部解決しちゃったりするかもよー?」
「んな安直な・・・・」
「いいじゃん。上来てみたけど屋根裏見ても何にもなったし」
「まぁ、どっちにしろ全部まわることになるんだから、先にそっち行っても問題ないよね」
「そーだよねっ?んじゃ、行こーっ!」
「はいはい」

 どこかやる気なさげに、シリオンは返事を返した。





 ―――――森。

 とても見慣れた風景。
 木々の合間から日光が惜し気もなく降り注ぎ、座っている自分の周りには様々な動物達(トモダチ)がまどろむように横たわっている。
 それらをぼやける視界を宿した赤い瞳で見回して、隣に大切な誰かが座っているのに気付く。
 その大切な誰かは、とても優しくて、強くて、いつも気付くと側にいてくれた。
 今、また自分の側にいてくれるのが嬉しくて。
 思わずその至福の瞬間をその身に纏い、満面の笑みを浮かべた。

 なのに。

『・・・・?』

 違和感が、その身を襲った。
 どうしようもない程の多大な寂寥感が。

 そして、その瞳をはっきりと開けた瞬間に、何もないことに気付いた。

『――――!!!』

 叫んだ。
 自分で何を言っているのか分からないくらいに必死に叫んで。

 そして、彼女の意識は浮上した。





 カチッ。
 木製の扉に付いていた、妙に無骨な金属製のカギを開けた音が当たりに響いた。

「よっし。開いたー♪」

 笑顔で、ソレを開けるために使ったのであろう、そこらに落ちていた金属片を、オムレットは得意げに持ち上げた。

「あんた・・・・たまに妙な業持ってるよな・・」
「ふっふっふ。すごいでしょーっ」
「表社会じゃ役に立たなさそうだけど」
「やかまし」

 最後の一言に余計なお世話だと言ってから、今役に立ってるだろうと付け加える。

「まぁ、とりあえず中に入ろうか」

 ケイス・ケイに促されて、ドアを開けて中を覗き込んでみる。
 中は、さすが地下、というだけあって、ひやりとした独特の湿気た空気が3人に伝わってきた。
 倉庫になっていたのだろう。まだ、少し大きめの棚などが数個残っている。
 壁は床と共に全て石造りで、棚の下と、主に人が通るであろう床に、厚手の布が敷かれていた。
 結構な広さがあり、やろうと思えばちょっとしたパーティーが開ける。・・こんなところでやるような物好きはあまりいないだろうが。

「ひろーーい・・・・」

 一番奥まで行って、一応棚を調べていたオムレットはそう呟いた。

「屋敷自体が大きかったしねー」


 







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