16.


Writer 遠夜






カランカラン...

「いらっしゃいませ〜」
 店の扉を開けて中に入ると、扉に仕掛けられていた鐘の音に少し遅れて、店員の声が聞こえた。
「うわ〜、いっぱいあるーっ」
 シャラが感動して声をあげているのを聞きつつ、店内をざっと見渡す。
 生地も様々に、質素な洋服からフリルのたくさんついた豪奢なドレスまで。
 店内余すトコロなく精一杯飾られていた。
 もちろん一般用の服だけではない。
 先ほど入る前見かけた、表の看板通りに、鎧や兜など戦闘用の防具らしきものも豊富においてあったりして、少し圧倒されるものがあった。
「コレはなかなか……ショコラに言われて来て見てよかったんじゃないか?」
「そうだね…でもこれだけあると、見てるだけで夜になっちゃいそうだなぁ」
「あなた達、うちは初めてだね?」
 困るなぁ、と言おうとしたら店員に声を掛けられた。
 美人系の身体のラインがスラッとした、けれど20代だか30代だか見た目判断つかない女の人だ。
 ちらっと横目で見回してみたが、この3人以外に客はいない、自分たちに言っているようだ。
 どうやら店員もこの女性一人のようで。
「うん。そうなんだけど、ちょっと種類多すぎて……」
 そう言うと、女の人はにっこり嬉しそうに微笑んだ。
「どんな服が欲しい?」
「シャラ、可愛いの!」
 近くで手当たり次第にめぼしい物を探していたシャラが、すぐさま反応した。
「ふむ。シャラちゃんって言うんだ? じゃぁ私も自己紹介しないとね。私はルッケリ。ルッケリ=プラモート。よろしくね、そっちの2人はどんなのが欲しいんだい?」
 親切な店員だなぁ、というより、暇なのかなと一瞬思ったけど。
 まぁそれはさておき、丁度いいから色々聞いて、適当に任せてしまおう。
「あたしはオムレットだよ。機能性の高い、動きやすい服が欲しいかな。良く動くから」
「私はシリオンだ。今の服装ではこの先寒いと聞いてな。冬用の、防寒性のあるローブを探している」
「ああ、なるほどね〜。ちょっとそこでまっててくれないかな? 選んで持ってくるよ」
「ほい。よろしくね」
 言うと、ルッケリは迷わず目的のモノを何点か手にすると、すぐに戻ってきた。
「はい。じゃぁ、まずはコレ。シャラちゃんのね」
「うわぁ、可愛いーーっ!」
 ルッケリが手にしたものは、まさしくシャラの求めていたモノだった。
 なんていうか、ひらひらぴらぴらしてて。
「………」
「シャラ、こんなのがいいの…?」
「うん。ねぇ、シャラこれがいいな! いいよね?」
 横目でシリオンを見ると、黙っていれば素直に綺麗だと褒めれる顔が微妙に歪んでいた。
 シャラはもう、それを着る気満々のようだ。
 コレはどう形容すればいいんだろう……
 全体的に真っ白なレースが端々に散らばっていて、見た感じ布の量も半端なさそうだ。
 まるでシャラ自信がオーダーメイドしたかのようにサイズもピッタリのようで、全体的にふわっとした、色も暖色系で可愛らしい。
 腰の後ろの部分に、でっかいリボンが付いていて、もうなんていうか、なんていうか……
 確かに、シャラに良く似合う。
 うーん。
 それにしても、一発でシャラの趣味を見抜くとは、ルッケリ侮りがたし。
 いや、別に侮ってないけど。
「う…ん、まぁ、似合ってるけど……動きに「いいよね?」
 なんだろう、この威圧感は。
「いや、えーと、それで良いと思うよ………」
「だよね! ねー、シリオン」
「あ、ああ……そうだな…」
 あんた顔引きつってるよ、リオ。
 今、こんな服着てる子と一緒に歩くと目立ちそうとか考えたよ、絶対。
 ていうか私は思ったし。
「じゃ、シャラちゃんはそれで決まりだね。次、オムレットはコレなんかどうだい?」
「コレでいいわ、あたし」
「お前、あんま見てないで決めるなよな…」
 さすがに即答しすぎか、あたし。
 そうだな、この服はだぼっとしたズボンと丈の短めの上着。
 良く見ると足元がちょっと煩わしいかなと思ったけど、さすがルッケリ服屋のカガミ。
 さっきあたしの言った事を忘れず、ズボンの裾が入るような網上げブーツをセットにして持ってきている。
「いいのいいの、パッと見悪くないし」
「オムってほんと、服装に無頓着すぎー。面白くないよ」
「服装に面白さを求めてどうすんのさッ」
「ああ、あんたは服装に求めるまでもないから、それでいいんじゃない?」
「どういう意味だッ」
 いるだけで面白い存在だとでも言うつもりなんかい…
 っと、そうじゃない、ルッケリが困ってる。
「えーと、オムレットはそれでいいのかな?」
「ああー、うん。コレでヨロシク。あとはシリオンのなんだけど、いいのあった?」
「もちろん。はい、これ」
 ルッケリが取り上げたのは、ローブというもので、着脱になれていない者がすると、酷く時間がかかるらしい。
 なにやら手順があるらしく、その手順を追って着脱しないと仕掛けが作動するような代物もあるらしい。と、随分前にシリオンに聞かされた。
「んー…こんなもんでいいか?」
「それ、あんた着方わかんの?」
 あ、でも以前まで着てたヤツよりはまだ簡単な構造っぽい。
 だらっとした、身体の線が見難い形なのは、ローブならドレも共通してるのかなー?
 肩や前面が大分開いた感じだけど、上に全身を覆うマントを羽織るから、防寒には問題ないんだろう。
 腰の辺りにジャラジャラとした紐が巻き付けてあって、ベルトの代わりっぽい。
 にしても魔法使いっていうのはなんでこう、わけのわからないモノを着たがるんだろう……?
 ローブの下は、割と普通の服装だけど。
「着れないものを買おうと考えるわけがなかろうが」
「いぃえぇ。あんた不器用なのに、よく毎日こんなやつ着れるなぁと感心を……」
「失敬な」
「ま、いいや。ルッケリ、全部でいくら?」
 憮然と答えたシリオンはおいといて、なにやらシャラを着せ替え人形のようして、シャラと一緒に遊んでいたルッケリに値を聞く。
「金貨3枚」
「………げ、高ッ!」
「全部新作だからねぇ」
「…ちなみに内訳は」
「シャラちゃんのが7割、2人のは同じくらいかな」
「………シャラ、他のに…」
「しないからね」
「やっぱり…?」
 金貨3枚とか、やっと稼いだ報酬がほとんど吹っ飛んじゃうじゃないか…
 さすがにこれ以上懐吹雪かせるのはまずいな……
「ルッケリ」
「負けないよ」
「うわぁ、察しのよろしいお方で」
「そりゃこっちも商売だからねぇ。どうする?」
「わかった。あたしって結構顔広いんだよね」
「で?」
「だから、行く先々でこの店宣伝してあげる。これじゃダメ?」
「ふむ…1割くらいならいいかな」
「3割で」
「……まあいっか。今日は記念日なんだよ、3割引しといてあげる」
「よっし、ルッケリありがとう!」
 なんの記念日なのかものすごくきになるけど、なんとなく聞いちゃいけないような気がして、そのまま話を進めてみる。
 少し離れて、シャラとシリオンがあきれた顔してるけど、お金ないんだから仕方ないだろうっ
「よし、じゃぁ次は北東にある……なんて森だっけ?」
「オム…地名くらいきっちり覚えておけよ」
「そうだよー、シャラ覚えてるよ。レルムの森でしょ」
「う、別に覚えてなくても……困る、けど」
 ちょっと自分に自信がなくなってきたかもしれない。
 あっれー?
 こんなに記憶力なかったっけか、あたし?
 最近ちょっと忘れ気味、かもしれない。
「北東のレルムの森……ってことは、最近火の玉がどうのって騒ぎがあったやつかい?」
「あ、ルッケリ知ってるんだ?」
 シャラがちょっと驚いて聞き返している。
「そりゃね……気をつけなよ? 確かここから行く途中で、猫の化け物が出るとも噂に聞いたからねぇ」









 






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