11.


Writer 遠夜



「・・あ! そうそう。だからさ、テウムって誰?」

 今思いついたように、俯いていた顔を上げて、オムレットはシャラにそう問うた。
 が、その途端、ギッという効果音が聞こえてきそうなくらいの勢いで、シャラはオムレットを睨み付けた。

「う・・・・」

 呻いて、オムレットは完全に沈黙する。

「・・ところで、シャラはなんでまたこんな所に居るんだ?」

 しばらく、2人を傍観していたシリオンは、持っている本を閉じようともせずに、シャラに向かってそう言った。

「わかんない。・・気が付いた時には、ここに居たから・・・・」
「いつ頃とか分かる?」
「・・・・ずっと前だったから・・何回おひさまが昇ったかなんて覚えてないよ」
「いや・・・・何年くらいとか・・・・」
「・・? 何年て何?」

 シリオンの言葉に、シャラは変なことを聞き返す。

「・・・じゃぁ、一日って分かる・・?」
「一日? ・・何それ」

 怪訝そうな表情をシャラはシリオンに向ける。

(日付感覚がない・・・? いや、それ自体の概念がないのか・・)

「一日ってのはね、おひさまが上って落ちるまでのことを言うんだよ」
「ふぅん・・・・」

 いつのまにか復活していたオムレットが、シャラに説明していた。
 それに対して、シャラは、分かったような、分かっていないような曖昧な返事を返す。

「ね。シャラ。一緒に来ない?」

 唐突に、オムレットはとんでもないことをシャラに提案する。

「・・どこに?」
「第3大陸ー」
「やだ」
「ええーーー?」

 即答で言われた否定の言葉に、オムレットは不満そうに言った。

「なんでー?」
「シャラ、テウム待ってるから、行かない」
「むぅ・・・・」

 はっきりとした意見に、オムレットは呻いた。
 今までの経緯で、なんとなくシャラにとってのテウムというのが分かってきただけに、何ともいえない。

「・・・・って、気が付いたら、なんかいつのまにか本読んでるしっ?!」
「いや・・だって、君らで会話してるし」
「・・君の仕事・・・・・・っ」

 まだ何か言おうと口を開いたはいいが、シャラの鋭い視線を感じ、思わずオムレットは言葉を呑んでしまう。

「ううう・・・・」
「まぁ、そろそろもう一度くらい帰った方がいいかな。・・疲れたし」
「うん。・・お腹すいたしねっ!!」
「・・・・・・」

 一瞬で立ち直り、気合を篭めて言った、オムレットの一言に、シリオンは何事もなかったように帰る仕度を始める。
 その側では、シャラがなんだか呆れた視線でオムレットを見ていた。

「明日、また来るねーっ」
「テウム、連れて着たらね」
「む・・ムリです・・・・」

 かなり不可能な条件を言われて、オムレットは呻く。
 2人、そんなことを言っている間に、シリオンは本を開いて、今にも帰る準備をしていた。


 何度目かの、緑色の光が2人を包んだ。


 







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